ターミナルケアを始めるためのスタート地点

看護師が行うターミナルケアにおいて、死を前にした人のサポートする際に最も重要なことは、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとどれほど嬉しいのかを、患者が理解できているかどうかです。言い換えれば、どれほどの資格があり知識もある看護師でも、患者から見て自分をわかってもらえないと感じれば、ターミナルケアを行うことは難しくなります。ポイントは、看護師が患者のことをわかるのではなく、患者が自分を理解してくれたと感じてもらえるかどうかです。

苦しんでいる患者を目の前にして、看護師ができることのスタート地点は、心配することです。大丈夫ですかと心配し、気遣い、注意深く観察することはサポートの入り口となります。しかし、いくら相手の立場に立って思いを巡らせても、看護師は他人であり、患者の本当の苦しみをすべて理解することはできません。しかし、たとえそうであったとしても、患者がこの人は自分のことを理解してくれたと認識してくれる可能性は残るでしょう。このように、患者は自分の苦しみを理解してくれている人の視点をとても大切にします。

どうしたらその理解者になれるのか、まずはわかる人になるための耳の傾け方があります。その方法とは、自分が知りたいことを聞くのではなく、相手が伝えたい言葉を聞くことです。そして、相手に対して患者の言葉が伝わったことを知らせる必要があります。具体的には、相手の言葉を繰り返す反復と、相手が思いを言葉ににするまでの間を待つ沈黙、そして、潜在化していて自分の支えを意識化させる問いかけの技法があります。